【インタビュー】走る喜び、そして誰かのために。|シンガー・WRJ アンバサダー Sunnyさん
(シンガー・WRJアンバサダーのSunnyさん)
「子どもから大人まで幅広いランナーさんが、自分のタイムだけではなく、チャリティーに意義を感じて走っていらっしゃる。カラダが元気に、ココロもヘルシーになれるランニングイベントで、そんなみなさんに関われることが楽しいんです」
ワールドランナーズ・ジャパン(以下、WRJ)のアンバサダーとして、支援先タンザニアなどの国歌を、明るく澄んだソプラノヴォイスでイベント開会式に独唱しているSunnyさん。ご自身の音楽活動やさまざまなチャリティー・社会貢献活動、WRJへの思いについてうかがいました。
−−−−−2013年2月からWRJのランニングイベントの運営に関わっていただき、国歌独唱だけではなく、エントリーした方々にバナナを配る役目も進んで引き受けてくださっていますね。
はい、「頑張ってください」とバナナをお渡しするとランナーのみなさんからも声をかけてくださって、コミュニケーションを取れる大事な時間だと思っています。運営に関わって、そこで直接感じる「何か」を大事にしています。
−−−−−そういった社会貢献の活動は小さなころから?
小学生の時に地域のボランティアグループに入って、中学時代には、地元のスポーツイベントで年下の子たちの誘導やお世話をする大会運営をしていました。都大会の司会や優勝者インタビューもしたんですよ。思うに、小さいころから背が高くて、整列するといつも一番後ろか一番前。自然に目立つ存在だったことが、「みんなをまとめなきゃ」というリーダーシップや、大事なことを周りに伝える喜びに結びついた気がします。
−−−−−音楽の道を志したのも早くからですか?
エレクトーンは幼児のころからですが、人の前で歌う喜びは、小学校のお楽しみ会とか中学の合唱部で歌うなかでだんだんと。でも中学3年の進路指導のときには、もう音楽しか頭にありませんでした。
−−−−−そして音楽大へ進まれて。「3.11」の時はニューヨークにいたと聞きました。
好きになる曲が英語の詞であることがそのころ多くて、もっとうまく歌いたい一心で語学留学していました。現地ではまだ前日の10日だったその日、友達から「すぐにテレビを見た方がいいよ」と連絡があって。東日本大震災の発生でした。
帰国を前倒しできないか焦っても焦っても、飛行機は取れなくて。必死にいろんな情報を集め続けていたら、次の日、近くのユニオンスクエア駅で日本を支援する募金イベントが早速あるらしいと知って向かいました。大きな駅の構内の一角でいろんなパフォーマンスが順々に披露されていました。
一人が終わって間が空いたとき、「次、なにか演る人は?」と声が。思わず手を挙げていました。前に進み出て、電車が入って来るごう音やブレーキがきしむ音が響くなかで私の声は届くのだろうかと不安に思いながら、「アヴェ マリア」を歌い出しました。
留学して1年、人種も文化も習慣もびっくりするほどさまざまで、まさに「カオス」を感じ続けていた街でした。なのに通りすがりの大勢の人たち、歳も身なりも違ういろんな人たちが、みるみる寄っていらして缶に次々に寄付を入れてくれるのが、歌いながら見えて。そのとき、自分のやるべきこと、やりたいことがはっきりしたんです。音楽は人をつないでくれる。なんて素敵なこと。誰かのために何かをする。わたしはこれだ、と。
−−−−−そんなご経験から帰国後いっそう社会貢献に関わるようになったんですね。
復学して声楽の勉強を続けながら、求められれば積極的にチャリティーやボランティアの場で歌うようになっていきました。つながりがまた別のつながりになることも多くて。WRJのスタッフさんと出会ったのも、そんなひとつの国際交流の場でした。
WRJに関わってさらに広がったことも多いんですよ。タンザニアをもっと知りたくなって、2014年に内閣府の「グローバルリーダー育成事業」に応募して参加しました。
タンザニア、インド、バーレーン…9カ国の若者が集まって、洋上研修を含めて1カ月間、一緒に過ごしました。WRJのイベントで国歌を歌ったことがきっかけで、トーゴ共和国の駐日臨時代理大使着任パーティーに招かれてトーゴ国歌を歌わせてもらったりも。ほかに16年夏から、フィリピン・セブ島で貧困下の子どもたちに音楽を教えるNPOの現地コンサートにソリストとして参加していて、楽しみもやりがいも増えています。
−−−−−ところでSunnyさんご自身は走っていますか?
う〜ん、最近はかなり忙しくなってしまって…。以前は朝よく40分から1時間ぐらいランニングしてました。でも、今でも旅行があると必ずシューズとウェアを持って行きます。
前を向いて走っていると、元気になれますよね。そして振り返ればそこに仲間がいる。個人として競うことも、ランナー同士、あいさつからすぐ仲良くなることもできる。走るって、人とつながれるスポーツだと思っています。
−−−−−WRJの活動に感じる意義はどんなことでしょうか。
「慢性的飢餓を終わらせる」ことをめざすアフリカ支援に加えて、「走ること」そのものの喜びもある。そんなWin-Winの形をつくれていることが素晴らしいと思います。給食、学校建設、奨学金という支援の3本の柱をはっきり打ち出していて、しかも奨学金は、男子ではなく、成長したら能力を家族や地域のために使う傾向が強い女子を対象にしている。対象をしぼることで、活動の目的もいっそう明確にできているところがいいと思います。
−−−−−これからのWRJに望むこと、そしてSunnyさんご自身の展望は?
参加しているランナーさん同士に、チームを越えてつながってほしいと思います。ランナーの輪がますます何重にも広がって、このアフリカ支援のイベント文化がいっそう知られるようになってほしい。初対面の方同士も会話できたり、ゲームを一緒に楽しんだり、そんな仕掛けをつくっていけたらいいですよね。
私はこれからも、自分が見てきた世界を、いろんな所で苦境にいる人たち、子どもたちに見せてあげたい。伝えたい。歌や舞台の表現と社会貢献を、ずっと両立していけたらいいなと思っています。
(インタビューに快く応じてくださったSunnyさん。右はWRJの矢崎事務局長)
【プロフィール】東京都荒川区出身。桐朋学園大学音楽学部で声楽を学び、在学中にニューヨーク大学へ語学留学。帰国・卒業と前後してプロ活動を始め、日米、台湾、フィジー、トルコ、スウェーデンなどで演奏。2枚のフルアルバム『Flower』(2014)『Earth』(2016)などをリリースするかたわら、母校である文京区立千駄木小学校の100周年記念歌などの作詞編曲活動も展開し、福山雅治出演のダンロップCM(2016年春)に起用される。コーラス指導のほか、舞台主演や全編英語ミュージカル出演、ミュージカルディレクターなども務め、現在、東京文化会館主催の乳幼児向けミュージックワークショップにも出演中。